博多から東京まで、新幹線に乗ってみた。途中下車のない乗りっぱなし約5時間の旅だ。
飛行機と比較して特に料金が安いわけでもなく、時間がかかるこの移動方法を選んだのは、ただ始発から終点まで新幹線に乗って、車窓からの景色を眺めたかったからだ。それに飛行機と違い気軽に席を立って車内を移動できる5時間は全く苦にならない。
今回唯一懸念していたのは荷物のことだったが、最近は後ろに荷物を置くスペースのある席を予め指定で予約することができるようになっていて、重たいスーツケースを自分で持ち上げたり、足元のスペースに置いて窮屈な思いをしなくて済むので大変ありがたいと思った。
いそいそと乗車券を買い、駅弁を売る売店に向かう。美味しそうなお弁当がこれでもか!と陳列された店内で、博多美人の売り子さんが薦めてくれたお弁当に決め、ついでにおやつやら飲み物やらを十分以上に買い込んで準備は万端だ。
平日だったためか、乗り込んだ車内はかなり空いていた。2割程度の乗客を乗せて定刻通りに出発したのぞみ号は、博多の駅を出るやいなや、ぐい、と加速し、そのままどんどんスピードを上げていく。新幹線の何が楽しいかと言えば、この凄まじいスピードで一気に日本国内を走り抜けていくことだろう。
窓の外を眺めながら、ゆっくりとお弁当を食べる。自分の好きなものを自分の好きなタイミングで食べることができるのは、ささやかな幸せだ。薦めてくれた彼女の言った通り、贅沢にも豊後牛と明太子が一緒に入ったお弁当は本当に美味しかった。
次々と移り変わる景色の中、一番印象深かったのは山口県の徳山駅のあたりだ。間近に迫る瀬戸内海と港とコンビナートの組み合わせは、私に日本が海と共にある国だということを強く感じさせた。
途中駅に着くたび、乗客は少しずつ入れ替わっていく。それぞれの行き先に向かう人たちの姿を見送りながら5時間経つ頃、自分もその中の一人であることにふと気が付いた。
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