ある朝、夫が「この間一緒に呑んでいた会社の同僚がコロナ陽性だって・・・」と言い出した。
聞けば夫も喉がものすごく痛く、そして体が熱っぽいという。測ってみると体温は38度以上、常備してあるART検査キットでもしっかりと陽性反応が出た。
即座に家族全員マスクを装着し、夫は厳重に家庭内隔離を開始した。
シンガポールでは、ART検査でコロナ陽性反応が出た場合、MOH(保健省)のホームページから近所の検査所を探し、自ら出向いてその場で改めて検査を受け、MOHから陽性確定の連絡が来た時点で正式に本日の陽性者の仲間入りを果たす、という流れだ。ちなみに検査は無料。そして夫も本日の陽性者のひとりとなった。
その後MOHからメールが来て、同居する家族がいる場合その情報を登録するよう促され、登録するとその家族宛てに濃厚接触者になった旨のお知らせが届く、という仕組みだ。
今まで身近でコロナ患者に接することなど皆無であったが、いきなりの濃厚接触者認定に戸惑いつつもまずは人と会う約束を全てキャンセルした。幸いなことに夫以外はART検査陰性だったので、何とかこのまま逃げ切らなければならない。
夫の様子はというと、ぐんぐん上がる体温とオミクロン株の特徴だという激しい咳、それに伴う激烈な喉の痛みで本当に辛そうだ。と言ってもほとんど部屋の中に閉じ籠り、部屋の前に置いた水分や、何とか食べられそうなものを受け取るときくらいしか姿を見ることはなかったが。
あまりの喉の痛みに、何かのど飴的なものが欲しいというので近所のドラッグストアでひと箱買ってきて渡したが、あっという間になくなってしまったため翌日再び同じドラッグストアに出向いた。ところがたった一日しか経っていないはずなのに、まるで手品か何かのようにその商品が全て忽然と消え失せているのを目にし、シンガポールでいかにオミクロンが猛威をふるっているかを思い知らされた気がした。
呼吸が苦しくなるということはなかったようなので軽症の部類に入るのだろうが、高熱と激しい咳と喉の痛みにやられて食欲もない夫を見ていると、ワクチンを3回打っていてこれでは、打っていなかったらどうなっていたのか・・・と思えて恐ろしくなった。
今回のことでシンガポール政府、あるいはシンガポールすげー、と思ったのは、濃厚接触者認定された人にはもれなくART検査キット3セットが無料で支給されるのだが、バスインターチェンジやコミュニティセンターなど、近所のあちこちに自動販売機(無料だけど)が設置されていることだ。IDカードに印字されているバーコードを読み取らせるだけで機械からキットが出てくる。そしてなんと多くの人たちがごく普通に検査キットを受け取っていたことだろう。思わず自分のことは棚に上げ、こんなにたくさん濃厚接触者が?!と言いたくなるほどであった。
その後も子供と私は毎朝自らART検査をし続け毎回陰性、夫も数日で陰性にはなったものの、長引く咳と喉の痛みでしばらくは家庭内隔離を続けていた。夫が完治してしばらく経ってから、子供と私で日本渡航のためのPCR検査を受けた際にも陰性、日本入国の際の検査も同じで今日に至る。
ワクチン接種完了していても罹患するし、軽症だったのはワクチンの効果なのか否かもわからず、近くにいてもうつらなかったのは単に運の問題なのか、数々の疑問を残したままのコロナ騒動であった。
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