ある日の夕方近く、近所をウォーキングしていた。
この時間帯はまだ明るく、しかし夕暮れ間近なため涼しいので、犬の散歩をする人やジョギング、ウォーキングをする人などが道を行き交っている。
住宅街を抜け、小学校の脇の道を真っ直ぐ歩く。小学校の敷地には、放し飼いにされているのかニワトリが数羽いて、のんびりと花壇の土を掘り返してはミミズか何かを探しているようだ。
調子よく歩いていたところ、突然頭上からけたたましいニワトリの鳴き声が聞こえてきた。顔を上げてみると、至近距離に異様な風体の鳥がいた。真ん丸な目で私を見ているのはホーンビルだった。
都市国家のイメージが強いシンガポールだが、意外にも豊かな自然が残されていて、野生動物や鳥などの生き物が見られる場所も多い。
ホーンビルは和名でサイチョウ(犀鳥)と言い、嘴の上に大きなソーセージを乗せたような特徴的な外見をしている。マレー半島を中心に東南アジアで分布していて、シンガポールでは一時絶滅したかその寸前までいったようだが、政府の保護活動が功を奏して最近では市街地でも見掛けるようになっている。
少し前までは、マレーシア国境近くのウビン島や自然保護区などで見つけるとそのレア感に大喜びしたものだったが、こんな近所でなおかつ至近距離で見つめ合う日が来るとは驚きだ。
ホーンビルは何故かニワトリと並んで学校の敷地にある低い木の枝にとまっていて、私と目が合うとケケケケケケッと甲高い声で鳴いて飛び立ち、学校の屋根の方へ飛んで行ってしまった。
日本では見ることのない生き物を日常の中で見掛けると、外国に住んでいる実感が湧いてくる。
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