ここシンガポールでもユニクロは大人気で、島内あちこちに支店がある。
価格はもちろん日本よりも高いが、2~3割程度なので私の中では許容範囲内だと思っている。何と言っても買いたい時にすぐ買えるのは便利だし、日本と時差なく新商品が店頭に並ぶのが地味に嬉しい。
先月下旬に発売された有名デザイナーとのコラボアイテムを買うために、発売当日午前中に旗艦店があるオーチャードセントラルの店舗に駆け付けた。売り場にはすでにシンガポール人のお客さんが大勢いて、手に手に何着もの服や下着などを持って熱心に品定めをしている。
物の値段に厳しいシンガポール人だが、お買い得となったら大量に購入することも厭わないので、彼らと競う時には気合を入れなければならない。負けじと大量の服を持って、試着室へ。
私は服を試着する時には、自分のサイズだと思われるものの他にワンサイズ大きいものと小さいもの、合わせて3着は試着するようにしているので、気になる品が複数ある場合にはどうしても試着の数が増えてしまうのだ。
大量の服を持ち込んだ私を見てスタッフの女の子はちょっと驚いたようだったが、開店早々に駆け付けた意気込みを察してくれたのか、にこやかに試着室へと案内してくれた。
早速とっかえひっかえ試着を開始したが、服の世界も奥が深い。特にサイズ表記というのは単なる記号で、いつも大抵Mサイズの服を着ています、というような人でも、どんな服でもMであればきれいに着られるのかと言えばそんなことはない。あっちの服はMで良かったがこっちはSの方がぴったりくるとか、この服はLにした方がおさまりが良くて逆にスッキリ見える、などといった場合があるのだ。
お目当ての服たちはそれぞれ素敵でテンションが上がったが、中には自分が着るとどうにも似合わないものもあり、鏡の中の自分の姿を見て思わず笑ったりしながら購入する商品を決めていった。
試着室から出て、購入する商品と返却する商品をスタッフの女の子たちと一緒に選り分ける。するとその中の一人が、何故この商品を買うに至らなかったのかと理由を聞いてきた。
日本のユニクロではそのようなことを聞かれたことは一度もなかったのだが、シンガポールでは最近こうやって理由を尋ねられることがある。日本へはコロナ禍でここ2年一時帰国ができていないのだが、やはり今はこのように理由を尋ねるようになったのだろうか。
試着をしながら、ここさえこうだったら購入したのに、とか、このサイズ表記は実感とかけ離れているとか、言いたいことは色々あったので、その思いの丈をぶつけてみることにした。
「これはすっごく気に入った。胸元のラインがストレートで、開きすぎていないところが好き。あと金具が金色で綺麗なところ。でも着てみないとサイズがわからないから3サイズ持ち込んだ。たくさん返してごめんね。」
すると一人の女の子が、「私もこれ全色買った。確かに着てみないとサイズわからないよね。思ってたよりも小さめな作りで。」と返してくれた。
これはどうしてだめだった?と別の服を指すので、
「これを着ると私は物凄く変に見える。肩が大き過ぎて脇も開き過ぎているから、どう着たら良いのかわからないのでやめた。」
その後もこれはデザインはすごく素敵で色もいいけど、この素材だと肌当たりが悪くて痒くなる、とか、気に入ったのならこれはもう1枚買った方がいいとか、つい試着室の入り口で話し込んでしまった。自分が本当に聞いて欲しいことを存分に聞いてもらえるのは楽しいことだ。
その日いたスタッフの女の子たちはみんなセンスが良く仕事熱心だったので、顧客からのフィードバックを生かして今後の商品作りに反映させてくれたらいいなと思った。
レジに向かうとそこには私が選んだのと同じ服を手にしたお客さんが並んでいて、絶対にどこかでかぶるだろうな・・・とは思ったが、気軽に近隣諸国にお買い物旅にも出られない以上、仕方がないので考えないことにした。
手頃な値段で安定した品質の服を提供してくれるユニクロは、ここシンガポールでも心強い味方だ。
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